それでも心のどこかで期待していた。
あの日、出会った路地を通る度に
これまでと同じように
笑顔で待っているくれるような気がして
私は彼の姿を探していた。
だが逢えなかった。
次の日も
次の日も
彼の姿を目にする事はなかった。
逢いたい。
財布に入れた名刺を取り出し彼の会社に電話をかけた。
番号を押す度に心臓の鼓動が高鳴るのを感じる。
もしもし、お電話代わりました。
彼の声を耳にした瞬間
胸がギュッと絞めつけられるような痛みを感じた。
彼と過ごした期間、
私から連絡する事は一度もなく
彼に連絡先を聞かれても教えなかった。
知らない方がいいと思っていたから。
ずっとそれが私の本心だと思っていた。
だが違う。
私は気付いていたのに自分の本心の見ようとしなかったのだ。
彼に対する想いを否定して続けていた。
逢いたいという想いも
彼に連絡したいという想いも
何もかも全てを私は否定していたのだ。