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23:涙のジョージ(7)

2016年07月18日 11:17

「愛してたんだよ.. 凄く愛してた..  
でも彼女にとって俺はただの性欲を満たすだけの道具。
若くて都合の良い燕だったんだよ。
でも俺は違った、愛してた。
それから女の人を信じらるのが怖くてさ、また裏切られるんじゃないかって。
ちょっと恐怖症、また誰かを好きになれるのか不安。」




愛してたんだよ...
その言葉は
今にも消えてしまいそうな程
儚げであり
彼の想いが計り知れないものだという事を痛感する。




時間は過ぎゆくのに
彼の中で時は止まったまま。
忘れられぬ彼女を想い続ける彼の姿を目にし切なく思う。
それは彼が口した「道具」という言葉に
相通じるものを感じたからなのだと思う。
愛のない世界で道具として生きて私と
愛する人の道具として過ごしてきた彼。
心に抱く感情を「道具」という言葉で否定し殺してきた私達であったが
誰かを想い切なさを抱く彼の事が羨ましく思えた。





「似てると思わない?」


「俺達が?」


「そう! 俺達が。
マスオさんは、人妻の事を忘れられない寂しがり屋さん。
だから私と一緒に居るんでしょう? 私も同じ。 誰と居ても寂しい。 
だから気が合うんだろうねっ。 ねぇ、こっち来て!」


「俺、ここで寝るから、気にしないで。」


「いいから! ここに来てよ。」


ベットを叩く私の隣に来た彼は
私の身体を引き寄せるかのように腕を差し出す
その大きい腕の中で私は子猫のように丸くなった。
男とホテルへ行き何もなかったのは
この日が初めてであった。



23:涙のジョージ(6)

2016年07月18日 11:16

ごめんね、楽な格好していい?
頷く私の目の前で
手慣れた感じでジャケット脱ぎ
ネクタイをはずす彼の白いシャツが
とても大人びて見える。
彼はとても大人の色気のある男であった。
妙に落ち着きがあり、穏やかで、優しくて
仕草や振る舞いに色香漂う。
そんな姿を目にする度に
未だ忘れる事が出来ない人妻が
どれ程イイ女だったのか感じずにはいられない。
すごくイイ女だったんだと思う。
そんな彼の姿を私はベットに寝そべりながら
ぼんやりと眺めていた。




「そんなに心配しなくても大丈夫だから安心して。
俺、ソファーに寝るから。」


「えっ? じゃー何でホテルに来たの?」


「さっき言ったでしょ? ちょっと疲れてたから、ゆっくりしたかっただけ。
セッ,クスしたくて小雪ちゃんと逢っているわけじゃないだよ。
俺さ、こーみえても遊ぶ女に不自由してないし
遊びならいくらだって寝れるしね。」


「確かに。 不自由しないだろうね。
私なんかと遊ぶより他の女と遊んだ方がいいのに。」


「遊んだよ、たくさんね...」



彼は私に背を向けると自分の事を語り始めた。
彼女に別れを告げられた後
好意を抱き寄って来る女達と遊ぶ日々を過ごすようになった。
” 遊びでしか付き合えないよ。”という冷たい言葉を添えて..
全ては彼女を忘れる為。
自分に恋愛感情を抱く女性を抱く度に
彼女の事を忘れられる日を迎える日が訪れるような気がした。
だが虚しくなるばかりで
誰も愛する事なんて出来ない。
気付いたのだ。
遊びは所詮遊びにしか過ぎないって事を。


23:涙のジョージ(5)

2016年07月18日 11:13

何時間走り続けただろうか。
ふと時計を見ると深夜1時を過ぎている。





   -------   今週さ、仕事が忙しくて、ちょっと疲れているんだ。
        俺の家に..って言っても母親と二人住まいだから無理だしな。
           まだゆっくり喋りたいからさ、ホテル行っていい?
        変な事しないから安心して、大丈夫だから、俺の事、信じて。




皆そう。
皆同じ。
それなのに私は期待する。
毎回、期待してしまう。
頭では分かっているのに
私はバカだから、そうでない人を探していたのかも知れない。
あの日からずっと世の中の男が薫と同じではない事を
私は探していたのかも知れない。
違う人もいる、って事で
あの悪夢から解放される事を私は求めていたのだ。
この世にいるはずもない白馬の王子様を探しも求めている私は
その言葉を耳にする度、どこか哀しく思う。
好きでもない相手なのに哀しく思うのだ。


誘うの上手だね。
そう言うと私は黙って頷いた。



木々に灯される
季節外れのイルミネーションの明りを目にし
期待を裏切られたような感情が押し寄せてきた。
好きでもない
愛してもいない男なのに哀しく思う。
いつもの事、どうって事無い。
そうやって私はまた自分に言い訳をし黙って彼の背を追った。



23:涙のジョージ(3)

2016年07月18日 11:12

数日後、残業を終え
寮へと向かう路地を歩いていた時には
日が暮れ、辺りは暗くなり始めていた。
薄暗い一本道の路地を歩いていると
数メートル先に停車していた車が光を放ち
こちらに向かい走行してくる。
それを避けるように路肩歩く私の横で車は停車した。





    
        何、この車?!

    






怪訝な顔で車を覗きこむと
運転席の窓がゆっくりと開いてゆく。






  ------   やっと見つけたっ! ほんと待ちくたびれたよ。
        こんなにイイ男が目の前にいるって言うのにさ。
         気付かないなんて勿体ないって思わない?
         お嬢ちゃん、暇ならさ、俺と付き合ってよ!









こんなイイ男?!
こんな台詞をサラッと言えるなんてすごい!
でも彼の言うとおり
笑顔でハンドルを握る彼は確かにイイ男だった。





私の目の前に現れた人物。
それは、あの日、出会った彼だった。
それは偶然ではなく必然。
彼の手によって繋がれた糸により
二度と逢う事はないと思った彼と再会する事となった。





23:涙のジョージ(2)

2016年07月18日 11:11

「で、君は何で寂しいの?」


「寂しいって思うのに理由なんかあるの?」


「ハハハ・・ 君って面白い事言うね。」



私達は互いに他愛もない事を話し
夜の街をあてもなく走り続けた。
最後に辿りついた場所
そこは私達が出会った場所
彼のセダンが待ち合わせ場所に停車したのを目にし
私じゃ力不足なのだと思った。
今までそういう男は一人もいなかったから。



「送ってくれてありがとう! 楽しかった!
人妻を忘れらるぐらいの出会いがあるといいね。じゃー、元気で!」



「ちょっと待って!これ俺の名刺と連絡先。」


差し出された白い名刺には
確かにマスオという名前が記されており
彼は一流企業の社員であった。



「本当にマスオって名前なんだね!」


「俺、嘘つかないよ。車降りた後、名刺捨てたりしないでね。」


外見とは違い子供っぽい事を口にする彼に見えるよう
財布の中に名刺を入れると
ほら、これで大丈夫でしょ、と私は微笑んだ。
別れ際、また逢ってくれる?と発した彼の言葉には驚いたが
二度と逢う気はなかった。
彼が求めているものと
私が求めているものは異なる。
私は素っ気なく考えとく、と答えるとその場を立ち去った。




23:涙のジョージ(1)

2016年07月14日 02:16

白いセダンが停車し
私は助手席に腰かける。
ねぇ、何でこんな事しているの?
男が訊ねるので私は答える。
じゃーさ、
何で貴方はこんな事しているのか教えて。



「俺さ、失恋したばっかりで寂しいんだ。」


「そっかぁ。 寂しいのは同じだね。」


「男なのに情けないよね、寂しくてね。
素敵な出会いがあったらな、って探してたんだ。」


彼の名はマスオ。
名前を聞いた瞬間、嘘でしょ。って噴き出してしまった。
二十代後半の彼は
今まで出逢った男達とは違い
妙に落ち着きのある色っぽい男だった。
年上の人妻と出会い、不倫を続けていたという彼。
美しく、厭らしい、年上の人妻。
憂いを帯びた彼女はリモコンを差し出すと、
目の前で下着を脱ぎ去り、バイ,ブを挿入したままコンビニへと向かう。
他人に見られる高揚感
恥ずかしさが彼女の興奮を奮い立たせ
何度も、何度も、彼を求め続けた。
数えきれない程、愛し合った二人。
だが突然、別れを切りだされ、目の前から彼女は消え去った。



今も私の心に残る人
これが彼との出会いだった。



22:服従して頂戴。(2)

2016年07月14日 02:14


    ―――  君みたいな子は、初めてだ。 また逢って欲しい。



男達は口々にこの台詞を吐いた。
タダでやれるのだから当然である。
所詮、私は道具にしかすぎない。
だがそれと同じように
私にとって征服した男になど
何の興味もない。
二度目はないのだ。



逢うのを拒み続ける私に
いくら出したら、また逢ってくれる?
君の為ならお金は惜しまない。
そういう言葉を投げかける男もいた。
この言葉を耳にする度に
言いようのない程、腹立たしい気持ちになった。


私は金が欲しいんじゃない!
男を支配し
征服したいだけ。



バイバイ。という言葉を残し
男の目の前から消えゆく私の心は浮き足だち
今にも空に駆けだしそうであった。
だが一歩足を前に踏み出す度に高揚感は薄れ
恐ろしい程の虚しさに襲われるのである。




寮に戻り部屋の扉を開け
真っ暗な室内を目にする度
もはや自分では補う事が出来ない闇にすら感じた。
私は明りを点ける事無くベットに腰かけては
窓から見える風景を茫然と眺める。
建物の間から見える灯。
それはいつまでも消える事無く
夜の街を灯し続ける吉牛の看板。
その明りを目にする度、切なくなったのを覚えている。
私は暗闇を灯す明りを探し求めていたのだろうか。





22:服従して頂戴(1)

2016年07月14日 02:12

休みの日は、出会った男とセック,.,スした。
相手が私みたいな不細工でも
受け入れてくれるなら誰でも良かった。
親子程、歳の離れた男から
刑務所から出所したばかりのヤクザまで
ハゲでも、豚でも、ヤバイ男だろうが何でも受け入れた。





恋の駆け引きなんてものも必要なければ
快楽なんてものを求めた事はなく
今の私流に言うならば
タダで寝てやった、とでも言うのだろうか。
すなわち授業料無料を歌い文句とするセッ,ク.,ス講習。
どうすれば男が感じるか
私の腐りきった脳味噌からは
もはや湧く蛆でさえもセ,,,ック,スしか能がない。





暴力という力でねじ伏せられながら生きてきた私は
ホテルの一室へ入ると男の全てを征服した。
私にとって重要なのは
何をすれば男が喜ぶかという事だけ。




指の動き




言葉




声 




舌 




若さ





全てが私の武器。



今まで散々ねじ伏せられきた。
女という生き物は、力では決して男には適わない。
だが裸になれば男なんて皆同じ。
男が平伏す姿に心が躍る。
ベットに横たわり身を委ね
喘ぐ男達の姿を見ていると
私の心は満たされる。
それは、乾ききった砂漠から水が溢れ出るような感じであった。






21:影踏み(18)

2016年07月14日 02:05

どうしてこうなったのだろう。
どこからオカシクなっていったのだろう。
何が悪かったのか。
どこへ戻ればやり直しが出来るのか。
薫と出会う前に戻れば普通に生きられたのか。
両親と出会う事がなかったら普通に生きられたのか。
分からない。
分からない。
同じだ。
きっと同じ。
違う道を歩んでいたとしても
私は此処へ辿りついているだろう。




誰と一緒に居ても寂しくて
誰と一緒にいても虚しかった。
誰でもいい。
誰かに側に居て欲しい。
ここから逃げ出したい。
この闇から逃れたい。



苦しみから逃れる術。
それは自分を傷つける行為。
新たな痛みを与える事で逃げられる。
苦痛にしか過ぎない行為であったとしても
現実逃避出来るものであれば何でも良かった。
あの日、屈辱を受けた事により
性に対する嫌悪感が強くなるかと思ったが
むしろ逆だった。





21:影踏み(17)

2016年07月14日 02:04

何故、警察なのか。
何故、警察という言葉がてでくるのか。
あの出来事を康子が知っているような気がして恐ろしくなった。



「何で? 何で警察なの?」


こーちゃんさ、自分で分からないの? 普通じゃないよ、
何か大きな問題があるんじゃないかって誰だって思うよ。
皆、心配しているんだよ。」


私、そんなにオカシイ?
皆に心配させる程、私はオカシクなっているのか。
そうだ。
そうだった。
忘れようとしていた。
現実から目を背けていた。
あの日、私は汚らしい屈辱を受けた。



軽い冗談で始めた一本の電話。
始まりは私自身が作り上げたもの。
だから自分を責める事しか出来ない。
だから苦しい。
だから涙が出るのだ。



話してみたら何かが変わるかも知れない。
辛かったね。
忘れていいんだよ。
もう大丈夫だよ。
こーちゃんは悪くない。
その言葉で私は救われるのだろうか。
楽になれるのだろうか。
いや..誰かに聞いてもらっても消えない。
私の中から消える事はない。
消える事がない出来事を話して何になる。
思い出す事で更に傷を深くするだけ。
これ以上、傷を深くしたくない。
言えない。
誰にも言えない。
誰にも話せなかった。






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