授業を終え、バス停に向かう。
何故だか分からない。
その日は
普段、絶対に乗る事がないバスを待っていた。
早い時刻という事もあってか人も少なく
バス停裏の敷地に生い茂る雑草を
ぼんやり眺めていると
歩行者の体が私の手に当たり握っていた鞄が地面に落ちた。
---------- ごめんなさいっ!!
振り返ると
同じ高校の制服を着た女の子が立っている。
「汚しちゃって・・・ごめんね。」
砂を手で払うと彼女は鞄を差し出した。
細い華奢な腕
セーラー服の袖の隙間から大きな青アザが見えた。
なんだか見てはいけないものを見てしまった気がした私は
視線を反らし手渡された鞄を受け取った。
「もしかして、見えちゃった?
見えないかなぁ、って思ってたんだけど見えちゃうよね?」
「ケガ大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫、もう慣れっ子だから・・・」
慣れっこ?
慣れっこって・・何?
まさか・・・
いや違う。
そんな子いるはずがない・・・・
強張る私の目の前で
彼女は諦めにも似た表情で言った。
------- 私の親、頭オカシイから。
全身に鳥肌が駆け巡る。
居たのだ。
この世の中に。
しかも、こんなすぐ側に。
私と同じ女の子が・・・
私と同じ痛みを持つ女の子が
今、私の目の前に現れたのだ。