薫の軽自動車に乗っている間も
ホテルのエレベーターに二人きりで乗った時も
これから自分達が行おうとしている行為を
世の中全ての人間どもに知られているような気がして
まともに顔を上に上げる事が出来なかった。
後悔していた。
一言も喋る気すら起きない私の隣で
部屋の鍵を握りしめる男の表情が
喜びをしたかくしに
冷静を装っているかのように見えた。
気持ち悪い。
何もかも全てが。
後悔で打ちひしがれる中
掌から溢れ出るお湯を眺めていた。
ふと気になり扉に視線を送ると
扉のわずかな隙間から
男が横目で私の体を舐めるように見つめていた。
あまりの気持ち悪さに背筋がゾッとした。
逃げられない。
もう逃げられないのだ。
観念した私は自分を清めるかのように
頭からシャワーのお湯を浴びると
白いタオル地のガウンを羽織り
男の待つ部屋へと向かった。