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13:13階段(25)

2016年02月05日 16:46

バスを降り自宅へ向かい歩いていた時だった。
私の名を呼ぶ声がする。
まさか・・? 
振りかえった先
そこで待っていたのは
運転席の窓から身を乗り出し私の名を呼ぶ薫の姿であった。




     --------  おーい! 何で無視するんだよ! 話があるから乗れよ。



運転席の窓から顔を出して大声で叫ぶ薫
最初は無視したが
無視すれば無視する程
道路に響き渡る程の大声で私の名前を呼び始めた。



私の故郷は狭い田舎町であった。
街の住人もほぼ顔見知りである事もあって
誰かに見つかるのではないかと思うと気が気じゃない。
今、目の前にいる薫の存在よりも
誰かの目にとまり
両親に告げ口される事の方が怖かった。


私は甲子園球児がベースに滑り込むように
後部座席に飛び乗ると
体を屈め外から見えないように小さく縮こまった。


車がどんどん進んでゆくのが分かる。
舗装されていない砂利道なのだろうか
次第に車の揺れが激しくなり
坂道を登り始めている事が何となく分かった。
激しく揺れ動く車の振動で
人気のない場所だろうと判断した私はようやく態勢を戻し
自分がいる場所を確認した。


狭苦しい一本道。
手入れのされていない草木が時折
窓ガラスを擦ってゆく様が私の瞳に映し出されていった。
生い茂る藪の草木の中に
ひっそりと潜むように身を隠す平地。
そこは誰も来ないような場所。
車が右に曲がり、そこで止まった。






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