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20:「僕」男の子。(11)

2016年07月07日 05:16




     ――― 綺麗な彼女をお持ちですね。






突然の雨。
大粒の雨の中、駆け込んだタクシーの運転手がミラー超しに声をかけてくる。
私は笑顔で和美の肩に手をかけると
力強く和美の体を引き寄せ、こう言った。







   ――― そうでしょ? 俺には勿体ない程のイイ女でしょ?









やがて男に間違えられる事が
ある種の優越感のようにすら感じるようになっていった。
面倒臭い女とは私は違う。
飾りっ気がなく、素のままの私。
ありのままの私。
少年を演じていた私はいつしか少年そのものとなっていった。






    ――― こーっ、お前は飾りっ気がなくていい。
       





和泉の言葉が、とても心地よく感じたものだった。
何もかもが順調だった。
仕事
友情
環境
何の悩みをなく
私は毎日、笑っていた。
毎日が楽しくてたまらなかった。






だが神様は残酷で
私が何か一つ手に入れる度に
その代償として私の中から何かを奪い取ってゆく。
笑顔の先に大きな暗闇が潜んでいるなんて
この時の私は想像すら出来なかったのだ。









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