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13:13階段(14)

2016年01月25日 22:43



       -------    着いたよ。




俯き泣き続けていた私は顔をあげ
助手席の窓から外を見た。
私が目にした光景は信じられないものだった。
薄暗い駐車場
そにはナンバーを看板で隠した車が数台止まっている。
明日、中...,絶するという立場に立たされている私
ずっと泣き続ける私を
薫が連れて来た場所はラブホテルであった。





            -------    疲れただろう・・ 少し休めばいいよ。





明日は人を殺,,,す日。


明日から私は殺,,,.人犯。


お前は共犯者だ!


同罪の罪人が 己性欲を満たす為に
今からセッ,.,クスをしようとしているのだ。
だがこの時の私は
もうどうでもいい、と思った。



笑った。
可笑しくて笑った。
あまりにも自分が情けなくて
ここまで利用されているのだと思うと笑いがこみあげてきた。
笑わずにはいられなかったのだ。



13:13階段(13)

2016年01月24日 22:39

翌日の午前中
手術をする事になりその場を後にする。
送るという薫を無視し歩いていると


       ---------  心配だから送って行くって言ってんだろう!!



薫が怒鳴るので
産婦人科の駐車場で怒鳴り合いの喧嘩となった。
意地でも言う事を聞かない私の手首を強引に掴みあげると
嫌がる私の背中を無理やり助手席に押し込んだ。
疲れていた。
何もかもに。
もうこの男と一緒になんか居たくない。
一人になりたいと思うのに、それさえも邪魔される。


走りだす車の中
私の涙がとまる事はなかった。
チェックのパンツに拭いきれなかった涙が零れ落ちる。
誰の為の涙なのだろう。
誰に対しての涙なのだろうか。
今も生きている子に対してなのか。
それとも自分の行おうとしている事に対してなのか。
手術に対しての恐怖なのか。
全てであった。
全てに対してだった。


怖かったのだ。
自分がどうなるのか。
怖くてたまらず
このまま全速力で駆けだし逃げだしたいとさえ思った。
そのまま消えてしまいたい。
消えてなくなりたいと思った。
幾度となく薫に話しかけれたが私の耳には入ってこない。
何を言われても、聞かれても茫然としていた。
助手席にうな垂れた私は下を俯きながら
とめどなく零れ落ちてくる涙をひたすら拭った。



         ------     着いたよ。




俯き泣き続けていた私が目にしたのは
信じられない光景だった。



13:13階段(12)

2016年01月23日 22:37

こうやって過去を振り返り文字にしてゆく度に
昔を思い出す。

唯一、父が機嫌良く
私と妹を外へ連れてゆく時、それはお正月であった。
嫌がる私達を車に乗せ
親戚中の家、一軒、一軒連れてゆく。
自分が乞食のように思え
すごく嫌だったのを覚えている。



頬の筋肉が浮き上がり
ご機嫌良く話し掛けてくる父は
お年玉を全部取りあげると
その金を握りパチンコに向かう。
手元に戻ってきた事は一度もない。



母はというと
お前達は2人で2千円!
親戚の××さん家の子は5人兄弟5人だから5千円!
お母さんは3千の損になる!
そう言ってお年玉を奪い取った。
何万円貰っても
私と妹の手元にお金が残る事はない。
ましてや親は何も買ってくれないのだ。
自分で生きてゆくしかなかった。


だがその為だけではない、
この家を出る日を夢見て
この地獄の様な日々から抜け出すために
その為だけに必死に働きコツコツと貯金していた。
真っ当な金。
必死に働き、何年もかけ蓄えた金が
まさか我が子を殺,,,す為に使うなんて思いもしなかった。



私は一体今まで何の為に
この地獄のような日々を辛抱してきたのだろうか
何の為に今まで耐え忍んできたのだろうか
まるで、この子を殺..す為に
今まで生きてきたような気さえした。


13:13階段(11)

2016年01月22日 18:06


高校生だった私には二十万程の貯金があった。
家には金がない。
飲んだくれのアル中夫婦。
自分達が呑む酒に使う金はあっても
私のために使う金なんてどこにもない。




すり減った靴底から雨水が染み
靴下がビショ濡れになる。
高校生になっても雨水が染みる靴を履いていた。
下着も通学に必要なバスの定期券ですら
何度、頼んでも両親は素知らぬふりを決め買ってくれなかった。





両親に頼れない私は
小学生の頃から自営業を営む後輩の家で
お手伝いという形でバイトをしていた。
部屋、トイレ、風呂掃除、洗濯といった簡単な家事全般
日給は千円であったが中学生まで続けた。

高校生になってからは、レストランでバイトを始めると
靴、バック、定期券、下着、洋服など
何もかも自分で買い揃えた。


一人で生きてこれたわけではない。
だがあの家で過ごす中
両親に何かを望み期待するのはやめた。
私には頼れる人はいない。
自分で生きていかなければならない、って。
いつも自分に言い聞かせ生きてきた。







生きていれば楽しい事はある。
そう思いながら当時の事を振り返り
幸せだった頃を探し出そうとするが一つも見つからない。
必死に探し出そうとしても一つも見つからない。
地獄のような日々だった。
それは私の心が貧しいからなのだろうか。
だが事実であるとはいえ
自分の親の恥を曝け出している事に対し
時々、罪悪感に苛まれる。
あんな親でも
こんな風に思う私がいるのだから不思議なものである。



13:13階段(10)

2016年01月21日 18:02

夏休みに入った直後、産婦人科へと向かった。
隣には薫もいる。
あの日を堺に連絡を一切絶ったものの
その後も、何度も連絡がありノコノコと付いてきたのだ。




「俺も少しなら何とか出すよ・・・」


「少しっていくら?」


人として倫理を問われる事を行おうとしているのに
その費用について口火を切る私。





    ----------    俺もさ、金ないんだよ、 実はさ借金があって・・ 

              まぁ、お前のせいで借金作ったようなもんなんだけどなぁ・・・




小さくなってゆく語尾が未練がましく耳に残る。
呆れた。
借金の原因まで私に押し付けるなんて。
薫の職業は、消防職員であった。
公務員は、基本的に副業は禁止であるという事を口にしていたが
消費者金融の借金返済の為に
深夜、スナックのボーイのバイトを隠れてしていた。
だがそれは私と出会う前からの話であり
私は何か買ってもらったり
尽くしてもらったという事は一度もない。




私が何も分からない事をいい事に、
消費者金融の借金の原因まで私に押し付け
挙句の果てには
私生活で大きな罪を犯そうとしている人間が
世間一般では自分の命を賭け、人を救う立場にいるのだ。
表向きは正義を振り翳し、人命救助ですか?
お前のような人間が人の命を救えるのでしょうか?




狂っている。

世の中、全てが狂っている。

その狂った

腐りきった世の中で

私は最も最低な事を実行しようとしていた。



13:13階段(9)

2016年01月20日 17:59

アキラに全てを打ち明けた。
一粒の涙さえも零れ落ちなかった。
哀しいから涙が出るとは限らない。
哀しいからこそ
泣けない事だってあるのだという事を
この日、私は知った。







「何にも心配する事ないよ。大丈夫、怖い事はないから。
目を閉じて数を数えるの・・ 1 2 3 4 5 ・・・
目が覚めた時には、全て終っているから大丈夫。」

 


 
      1






     
      2







      3







      4







      5






動揺する私の背中に手をかけ
優しい言葉をかけるアキラ。
誰でもいい。
縋りつきたい思いであった。
自分がやろうとしている事も顧みず
最後の最後まで私と言う人間は
自分の事しか考えられなくなっていた。



13:13階段(8)

2016年01月19日 17:58

この世に生を受け
人として生きる未来を託されるはずの命に対し
あまりにも軽率すぎる自分の行動に
ただただ泣く事しか出来なかった。
一日が過ぎ、二日、四日と日が過ぎて行った。
毎晩、風呂に駆け込み腹を摩り
泣いて詫びる日々をおくる私に対し




―――  何モタモタしてんだ?! 早く薬を飲め!



薫は怒りを露わにし怒鳴った。
早くヤレ! って
とっととやっちまえ!って。
毎日のように私の背中を押し続けた。




どんな綺麗事を並びたてても答えは出ている。
薬を飲むのも
病院で中、絶するのも同じ罪であり
殺人である事には変わりない。
だが薫の望む流、産という形で
我が子をジワジワと何日も苦しめながら
殺..すような事は出来なかった。





「薬は飲まない。 病院に行こうと思っている。」


「嘘だろ?病院だと金がかかるんだぞ!」


「何日もかけて私に殺,,せって言っているの?!
もう、あんたには頼る事はないから。 二度と私に付きまとわないで!」




こんな人間に相談した事が間違いだったのだ。
頼れるのは自分しかしない
覚悟を決めた。
決めるしかなかった。



13:13階段(7)

2016年01月18日 17:55

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13:13階段(6)

2016年01月17日 17:53

罪の意識なんてものは微塵もなく
日常の出来事の中の一部のような発言
医療費を惜しみ処置を勧める男。
なかったものにしようとしている
薫の存在が死神に思えた。


自分を痛みつける行為は親への復讐
だがその浅はか過ぎる行動で
尚も自分の首を真綿で絞める事になるなんて思いもしなかった。
だが傷付くのは私だけではない。
私一人だけの問題ではないのだ。



こんな私に育てていけるだろうか? 
我が子を胸に抱き
生活する姿を脳裏に描く
何度、描いても
疲れ果てている自分の姿しか見えない
それは今まで私が散々目にしてきた母の姿であった。


愛せるだろうか?
私のような人間が
自分の子を愛せるのだろうか?
誰も好きになった事もなく
愛した事すらない私みたいな人間が
子供を愛せるのだろうか?
自信がない。
想像が出来ない。
これから先、好きな人が現れるかも知れない。
その時、私はどうするのだろう。
きっと思う。
いや必ず思うだろう。
この子がいなければ。
この子さえいなければ、私は幸せになれたのに。
この子がいるから幸せになれないのだって。
全部、子供のせいにする。



私の顔をいつも憎たらしい!という威圧的な目で
父が見ていたように
私も邪魔だって思う時が必ずくる
憎たらしいって思う日がくる
生まなきゃ良かったって思う日が必ずやってくる。



そこには幼き頃の私の姿と

両親の姿があった。



13:13階段(5)

2016年01月16日 17:50

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