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13:13階段(4)

2016年01月15日 17:48

         ―― コンドー,.,ムを使うと感じない。 ゴムが邪魔だ




男は度々この言葉を口にする。
この言葉を女に吐き捨てる男の姿を目にする度に
鶏のような首筋に
容赦なく爪を食いこませ、絞め殺してやりたい!という衝動に駆られる。
それは女の肉体で快楽を得ようとする
男の傲慢な意見でしかない。
そこに女の意思や尊厳は存在しないのである。


忘れもしない。
一生忘れてはいけない罪を犯した。
高二の夏、私は妊娠した。
薫の子であった。





コン,.,ドームを付けると感じない。
避妊を拒否する薫。
私は毅然と拒否し
私の体に触れる薫の手を力強く振り払い
その場を後にしようとした時だった。

        

         ――  何で、俺の気持ちが分からないんだ!


大声で怒鳴ると
私の頬を容赦なく引っ叩いた。
頬に残る鈍い感触が痛みとなり
やがて皮膚が熱くなり腫れあがる感覚に襲われた。



己の快楽のため
ただそれだけの為に私を容赦なく引っぱたいた薫。
少しでも気に入らない事がある度
暴力を振い続けた父。
手加減なしでブン殴った今村
そして須藤
この世の中の男は皆、同じである。
汚らわしくて、傲慢で、暴力を振るう事しか能がない。
力づくで女をねじ伏せ
黙らせては自分の思い通りに動かす。





皆、皆

最低な奴らばかりだった。



13:13階段(3)

2016年01月14日 17:45

それが自分を傷つける行為であったとしても
その苦しみや痛みが大きければ大きいほど
自分を痛みつける事で
あの家から解放された。
両親が最も嫌がる行為事をする事で
復讐を成し遂げられているような気がしたからだ。




両親を目にする度に
お前達が一番嫌がる汚らしい事を今からしてやる!と思った。
薫に逢った時は
お前が私を性欲の捌け口に利用しているのと同じ。
私にとっても、お前はただの道具。
お前は私にとって両親に対する復讐の道具だ!
心の中で罵った。



だが一番、滑稽かつ無様であったのは、
私が散々心の中で罵り
嘲笑い続けた薫でも両親でもない。
私自身であったのだ。
何て愚かな女なのだろう。
そんな下らない事の為に、私は薫と逢い続けたのだ。




何も見えてなかった。

何も考えてなかった。

なんて愚かなのだろう。

そんな無意味な事のために

その為だけに私は一生消える事がない罪を犯した。






今もなお消える事がない

あの出来事。



そんな私は今も能々と生きている。


当たり前のように生きている。


何食わぬ顔で酸素を吸い、二酸化炭素を吐き出し


ただ意味もなく生きている。


意味もなく生きてるのだ。



13:13階段(2)

2016年01月13日 17:43

薫と言う男は常に一方的で強引な男であった。
二度とセック.,.スなんてしないと誓ったあの日から
家に電話がかかってくるようになり
親にバレたら何されるから分からない!
二度とかけるな、と言っても
それならバレないようにすればいい
ワンコールして一旦、切るから出て!
ワンコールが鳴る度に心臓が破裂しそうになる
私は両親にバレないように慌てて電話に飛びついた。



最初の頃は、薫の誘いを拒み続けた私だったが
家から逃げ出したいと思う時には
苦しみから逃げ出す為
ただそれだけの為に
2、3か月に1回のペースで薫と寝た。
行為自体、何ら変わりない。
快楽なんてものもなく
濡れる事さえも知らなぬまま
苦痛しかない世界。


だがもっとマシや奴を探そうなんて思わなかった。
情が湧くような男ではなく
傲慢で自分勝手な
薫の様な男の方が都合が良かったのである。



それが自分を傷つける行為であったとしても
その苦しみや痛みが大きければ大きいほど
自分を痛みつける事で
あの家から解放された。
両親が最も嫌がる行為事をする事で
復讐を成し遂げられているような気がしたからだ。



 

12:13階段(1)

2016年01月12日 17:40

育ててくれた父親の事を
殺してやりたいとまで憎むアキラ
自分の親を殺してやりたいとまで憎む気持ち。
きっと普通の人間には理解しがたい事だと思う。


だがこの世に生を受け
憎しみを背負って生まれてくる人間がどこにいるのだろうか
優しくて穏やかなアキラの心の中を
ここまで変貌させたのは彼女の父親なのだ。




高校生になっても家は何一つ変わる事がなかった。
両親は酒に溺れ
夜中は発狂する父の声で叩き起こされる。





     苦しいーーーっ!  助けてくれーーーっ!



     救急車を呼んでくれーーーっ!  




         死ぬーーーっ!  



         死ぬーーーっ!!







深夜、近所中に響き渡る奇声をあげ
黒いアスファルトの上をのたうちまわり
何時間も喚き散らす父。
その奇声を耳にする度に
父親という存在がもがき苦しみ消えゆく様を
何百回、脳裏に描いた事だろう。




消えてしまえ!


居なくなれ!




情けない無様な姿を目にしながら
頭をひっぱたいてやりたい!という怒りを堪え
母に急かされ父の重い体を引きずって家まで運んだ。



12:失われた小鳥たち (23)

2016年01月11日 17:38

上手に表と裏を顔を使い分ける事が出来ず
それを笑いのネタにするために聞いて来る
屑な輩共にも
蔑まされている事を承知の上で何でも話した。

そんな事もあり
彼女がサイトで知り合った男と遊びまくっているという事は
学校中の誰もが知っていた。



               アイツ誰とでもヤッテいる。



皆に何と言われようが
私は私だからいいの、言いたい人に勝手に言わせておけばいいのよ。
何を言われても冷静で穏やか
怒った姿なんてみた事がない。
だがそんな彼女が冷静さを失う事が一つだけあった。
それは父親という存在。
暴力を受ける度
彼女は私の前で怒りを露わにし、こう呟いた。




            
               殺,.,ろしてやりたい。




父親にこの世から消えて欲しいと思う事はあったが
この頃の私は
まだそういう感情を抱いた事がなかった。
彼女の言葉を耳にする度に
今まで彼女が父親の暴力に
どれだけ傷付いてきたのかという事と同時に
彼女の心の闇の深さが
とてつもなく大きいものだという事を感じずにはいられなかった。


12:失われた小鳥たち(22)

2016年01月10日 17:36

どんなに努力をしても
男じゃない!
その一言で否定される。
認められない、望まれなかった子。
暴力を受け、勉強、勉強、と縛られる日々。
窮屈でたまらない毎日から逃れるかの様に
アキラは中学生の頃から
サイトで出会った男と大人の関係を持っていた。




この頃、アキラはサイトで知り合った
三十半ばの男と付き合っていたが
彼と付き合いながらも他の男とも寝ていた。
皆サイトで知り合った男達。
来る者拒まず。
欲求を満たすためだけに言い寄って来る男共と
次々と関係を持っていた事もあり
アキラの周囲には常に複数の男の影がチラついていた。




何不自由ない裕福な環境で育ったアキラ
貧しい環境で育った私
全く異なる環境ではあったが
暴力の支配下に置かれた私達が持っている
「闇」は同じものであった。




ただ私は表向きは
親しみやすく面白い子を演じていたが
物凄く用心深く、人を信じない
他人に自分の中に入り込まれるのが苦手であり
人に詮索される事を極端に嫌った。
それが誰であったとしても必ず一線をおいて付き合っていた。


だがアキラは違う。
才能に優れているのに、こういう面で不器用な人間であった。



12:失われた小鳥たち(21)

2016年01月09日 16:54

女しか産めないお前が悪い!
アキラの前で母に暴力を振う父。
この家に必要なのは女じゃない、男だったんだ!
女として生まれてきたアキラを否定する父。



         「 私は望まれない子供。 」



彼女は、この言葉を頻繁に口にしていた。
親に望まれないという感情は見る側によっては被害妄想。
悲劇のヒロイン。
ナルシストの自惚れ屋、なんて思う人間がいるかも知れない。
私自身も未だに自分自身の事を客観視し見つめる中で
自己愛が強い人間なのだと感じてしまう。
だが誰も好き好んで、その言葉を自ら生みだし
故意に傷付いているわけではない。
私だって望んでいる安堵出来る日を。
この苦しみから逃れられる日を。
その言葉を生みだし、口にするアキラの姿を目にする度に
彼女が、今までどんな想いをしながら生きてきたのだろうと思うと
そんな簡単な言葉では表現できない程
切ない気持になる。



彼女が父が望む理想とする子供になる為
どれほどの努力してきたかという事は
彼女の姿を目にするだけで痛い程、伝わってきた。
アキラという女は
何をやっても常に一番。
非の打ちどころがないほど何もかも完ぺきにできた。
皆が出来ない事も
彼女の手にかかれば簡単な事に見えてしまう。
勉強、運動、裁縫、お菓子作り、性格。
点数をつけるならば、まさに100点満点であり
彼女に出来ない事は何もない!
そう断言出来る程、常に完璧であった。



だが角度を変えれば
それは個性豊かな一人の人間ではなく
父親が作りあげたロボットでもあったのだ。


12:失われた小鳥たち(20)

2016年01月08日 16:52


「私達ってさ、すごく似てる。 」


アキラの実家は、父親が小さな会社を営んでいた。
田舎という事もあってライバル会社もなく
この地の大半の仕事を請け負っていたため
アキラは何不自由のない裕福な家庭で育ってきた。



父親が一代で築き上げた会社。
会社の跡取りとなる息子欲しさに
子供が生まれる度に男の子を待ち望んだ父。
だが生まれてくる子は全て女。
妻も高齢出産に差し掛かる年齢という事もあって
最後のチャンスに望んだ五番の子
それがアキラであった。


一番年齢が近い姉も
アキラとの歳は十歳以上離れており
姉は嫁ぎ家に残ったのはアキラだけ。




      ―――   必死に働いて
             子供を育てても他人の家に嫁がせるのだから
             今まで何の為に苦労してきたのか分からない。



男の子を望み続け
最後の子宝に希望を抱きながらも
目の前にいるのは女の子。
男でない事に歯痒さを隠しきれない父は
将来、アキラに会社を継がせるため
婿養子を取る事に躍起になった。




      ―――  こんな成績じゃ家の跡は継げない!




試験の成績が悪ければ
皮膚を指先でつねりあげ、妻まで殴る。
母が殴られる姿を目にするのが耐えられなかったアキラは
父の期待に答えられるように必死に勉強した。
学習塾、習字、ピアノ、そろばん、日本舞踊まで習い続けた彼女。
だがどんなに彼女が努力をして100点を取っても
父は認めてはくれない。
父が望み続けたのは100点ではない
男の子だったのだ。



12:失われた小鳥たち(19)

2016年01月07日 09:43

その後
どのようにホテルを後にし
帰宅したのか覚えてない。



ただ帰り際
俺の事、好きなんだろう?
次、逢えるまで寂しくないように、コレ持ってきてやったんだよ。
一枚しかないんだから大事に取っとけよ!って
一人で写った薫の気色の悪い写真を
手渡された事は覚えている。









「あのね、私も同じなの・・・ あなたと同じなの・・・聞いて貰えない? 私の話し。」





今まで誰にも言えなかった。
何でも打ち明けてくれた涼にも
高校生になって出逢った真央にも
自分の家庭環境や悩みを口にする事ができなかった。
両親を馬鹿にされ笑われるのが怖い。
私自身に非があると言われるのが怖かった。





涼と一緒に居た時と同じように
真央やクラスの仲間と一緒に居る時
それなりに楽しそうに過ごし笑ってはいたが
それは表面上のもので、そういう私を演じていた。
一緒に過ごす仲間達とも
「心」にある一定の距離を保ち
自分の奥の潜む
内に秘めた感情を曝け出す事はなかった。



だが この日
目の前に現れた少女に
父の事、薫との出会い
そして初めて逢った日にホテルへ行った事まで
包み隠さず全て打ち明けた。




今まで自分の中に溜めてきたモノが
一気に溢れ
私はその全てを吐きだした。
彼女なら私の事を否定しないという確信が
私の中にあったのだ。



12:失われた小鳥たち(18)

2016年01月06日 09:41

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