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13:13階段(26)

2016年02月06日 16:48

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13:13階段(25)

2016年02月05日 16:46

バスを降り自宅へ向かい歩いていた時だった。
私の名を呼ぶ声がする。
まさか・・? 
振りかえった先
そこで待っていたのは
運転席の窓から身を乗り出し私の名を呼ぶ薫の姿であった。




     --------  おーい! 何で無視するんだよ! 話があるから乗れよ。



運転席の窓から顔を出して大声で叫ぶ薫
最初は無視したが
無視すれば無視する程
道路に響き渡る程の大声で私の名前を呼び始めた。



私の故郷は狭い田舎町であった。
街の住人もほぼ顔見知りである事もあって
誰かに見つかるのではないかと思うと気が気じゃない。
今、目の前にいる薫の存在よりも
誰かの目にとまり
両親に告げ口される事の方が怖かった。


私は甲子園球児がベースに滑り込むように
後部座席に飛び乗ると
体を屈め外から見えないように小さく縮こまった。


車がどんどん進んでゆくのが分かる。
舗装されていない砂利道なのだろうか
次第に車の揺れが激しくなり
坂道を登り始めている事が何となく分かった。
激しく揺れ動く車の振動で
人気のない場所だろうと判断した私はようやく態勢を戻し
自分がいる場所を確認した。


狭苦しい一本道。
手入れのされていない草木が時折
窓ガラスを擦ってゆく様が私の瞳に映し出されていった。
生い茂る藪の草木の中に
ひっそりと潜むように身を隠す平地。
そこは誰も来ないような場所。
車が右に曲がり、そこで止まった。




13:13階段(24)

2016年02月04日 16:43

            ブッブッーーーーー。





道路に鳴り響くクラクションの音。
一刻も早くバスが来る事を願った。
家までは絶対に追って来ないだろって思ったからだ。
バスが来るまで後、五分。

後、二分。

後、一分。

お願い、早く来て!

バス停に屯する人の塊が動き始める。
身を乗り出し道路に視線を送ると
水色のバスがこちらに向かって来るのが見えた。




     プシューーーッ。




大きな音を立てて停車するバスに飛び乗り
バスが動き始めたのを確認すると
ようやく薫の車が道路に停車していないか確認する事が出来た。
緑色の公衆電話ボックスの横に停車していた
紺色の軽自動車はどこにもない。
諦めて帰ったのだろう。
良かった・・
だがこの後、私は地獄へ突き落とされる。
何も知らない私は地獄へ向かうバスに乗っていたのだ。



13:13階段(23)

2016年02月03日 16:42

高校の門を出てバス停へと向かう道路
その先にある公衆電話ボックスの前に
停車している紺色の軽自動車を目にした時
あまりの恐怖に息が止まった。
それは薫の車であった。



再会を何度も拒み続ける私に付き纏う薫は
学校の近くで待ち伏せするまでになった。
私は気付かれないように友達の輪の中に入りバス停へと向かう。




            ブッブッーーーーー。




車を横切り前を向いて歩いていた私を
引きとめるかのように
クラクションの音が鳴り響いた。
こんな男と知り合いだなんて思われたくない。
私は振りかえる事無く無視した。
私じゃない!って思わせる為に無視し
バス停に屯する友達の輪の中に身を潜めた。






13:13階段(21)

2016年02月01日 23:02

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13:13階段(20)

2016年01月31日 23:00

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13:13階段(19)

2016年01月30日 22:58

歌が聞こえる。
早送り再生しているような甲高い歌声。
歌声が響き渡る中
薄黄色とくすんだ緑色の二色が交差した
まるでペロペロキャンデーの様な
グルグルグルグル回転し続ける大きな渦を見つめていた。






その渦の中に
緑色の服を身にまとった三角帽子をかぶった小人が
渦の中にのみ込まれた。
小人は輪の中をグルグル回転しながら
渦の奥へとのまれ吸いこまれてゆく
小さくなっていく小人。
甲高い小さい悲鳴が音楽と共に聞こえていた。


渦にのみ込まれ
小さくなってゆく小人を見つめながら
助けなければならないと思う私と
手を差し伸べる事で
私も渦の中へ消えてゆくのではないかという恐怖が襲い
手を差し出す事に躊躇する私がいた。




耳に届く甲高い歌声と悲鳴

グルグル回転し続ける渦

のまれてゆく小人

助けなければ後悔すると思った私は
渦の中へ身を乗り出し
手を差し出すと小人の手を力強く掴み引き上げようとしたのだが
体ごと私も渦の中へ引き込まれてしまった。




回転し続ける渦
歌声は次第に大きくなり
私の体は外回りで回転しながら渦の中心へとのみこまれていく。
渦の中心へ向かうにつれ
回転スピードも速くなり
それに合わせるかのように歌声のスピードも加速する。





        ――― このまま、のみこまれていくんだ・・




大きくなる音楽と加速する歌声。
それに合わせ体も回転し目も回る。
グルグルグルグル回転する渦
私の体も目まぐるしい勢いで回転し
目が回る。



渦の中心へ向かい
奥へ奥へとのみこまれていく中、思った。
このまま死んじゃうんだって。
私も小人と一緒に死んじゃうんだって。
回転し続ける渦の中
私はそう思った。



13:13階段(18)

2016年01月29日 22:54

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13:13階段(17)

2016年01月28日 22:52

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13:13階段(16)

2016年01月27日 22:49

翌日の午前中、私は産婦人科にいた。
糊のはりついた硬いガウンを
看護婦さんが手渡す。


薄いカーテンの先にあるのは手術室。
一枚の布で隔たれた空間。
私が一歩足を前に踏み出す事により
小さな命が消される。
命が絶たれる。
私の手により、私の意思によって殺,,,される。
抹消されるのだ。




脳裏に浮かび上がるのは
このままここを駆け出して必死に逃げる私の姿。
怖くて、不安で、赤ちゃんに申し訳なくて
込み上げる感情を抑える事が出来なかった。
私の涙は大きな雨水の様に
ボタボタ・・と悲しい音を立てながら床に落ちていった。
必死に堪えようとするがダメだった。
私は自分の掌で力強く口を塞ぎながら
口から漏れる嗚咽を必死に堪えながら
このまま呼吸が止まればいいと思った。
このまま息が出来なくなって死ねたらいいのに、って。




世の中の人間はここで笑っている。
子供を宿した事に
母親になれるという資格を与えられた事に。
だけど私は違う。
ここで生むのでなく、殺.,.,そうとしているのだ。
自分が生きてゆく為に
ただそれだけのために
何の罪もない命を踏み潰し無かったものにしようとしている。

苦しい・・・

苦しい・・・・・

だけど一番苦しいのは私ではない。

私は声をあげ泣いた。
大声をあげ泣き崩れた。
一度、出した声は止まらなかった。





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