彼に差し出された腕に身を委ね子猫のように丸まった。
白いシャツを伝い
彼の体温を感じる。
それは人の生身の温かさ。
どくん。
どくん。
どくん。
彼の高鳴る心臓の鼓動が伝わってくる。
緊張の中に感じたもの。
それは胸をギュ―ッ、と締め付けられるような痛み。
生まれて初めて息苦しさにも似た痛みを味わった。
それは幸せではなく哀しみ。
彼が寂しさを感じているという事が
痛い程、伝わってきたから
その痛みを感じ取る度に
いつしか私は今までとは違う寂しさを感じていたのかも知れない。
だからこの微妙な関係が歯痒く感じるようになっていった。
彼に逢う事も。
彼が何も求めてこない事も。
目の前にある温かさを信じる心より
これから先
彼と一緒に居る事で傷付く事を恐れ
終わりにしたい、と思う様になっていった。