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12:失われた小鳥たち(5)

2015年12月24日 18:09

いつまでも
少年であり続けなければならなかった私は
初潮を迎えた時も
とても恥ずかしい事だと思ったし
汚ないもののように感じた。


そんな私は高校生になってもブラも付けなかった。
そういう下着を身に付ける事にさえも抵抗を感じていたから。
ブラをつけるようになったのは
高校一年の時
お昼ごはんを食べ終えた私に




   ------------  アンタ、まだブラもつけてもないの?! 恥ずかしい!




皆の前で彩加に侮辱されたからだ。
その場にいられない程、屈辱的だった。
だがきっとその時の彼女の言葉がなかったら
私はその先もブラを使う事はなかったような気がする。


色気づく女子達を罵る両親を目にする度に
私は私が演じている少年に騙されつづける両親の事を
心の底から罵り、嘲笑った。
お前達がどれだけ立派な人間なんだ!
お前の娘が
陰で何をやっているのかなんて何も知らないだろ!
笑いがこみあげ
私の中の黒い闇が満たされてゆく。


学校でも同じだ。
勉強もせず、授業にもついてこれない。
そのくせ男のケツばかり追っかけている女の姿を見る度に
真面目に見える人間程
裏で何やってんだが分からないもんだ。
もっと要領良く遊べばいいのにとさえ思った。
そう思う事により
私は自分の中に潜む「後悔」というものを葬りさり
優越感に浸った。
周囲の人間の姿を目にする度に
勝ち誇ったような気さえしたのだ。



12:失われた小鳥たち(3)

2015年12月22日 18:03


これまで自分の髪の毛を容赦なく掴みあげ
引き抜く事で内に秘めた感情を抑えてきた。
自分を苦しめ
傷みつける行為
肉体を通じて得られる痛みによって
私は自分自身の存在
生きているという実感
生きている意味を見出す事に必死になっていた。




目の前にいる男。
それはこの世の中で最も醜い男であった。
彼の容姿、目つき、声、仕草、振る舞い
その全てが身の毛もよだつほど
酷いありさまだった。
その男に抱かれる事で得られる痛みが
私への罰でもあり
生きているという事を実感できた。



そう。
私は澄み渡る青空を眺めたあの日。
女になった。
世間一般に言われるセッ,.クスというものを経験したのだ。
それは私でもあり
両親の目の前にいる私とは明らかに違った。
私は私じゃない。



両親が満足気な顔をする度に、私の中に潜む女が嘲笑う。
私に騙されている両親の事を
心の奥底からバカにして笑っていた。




12:失われた小鳥たち(2)

2015年12月21日 18:01

それからの私は両親が望む
「普通」とやらを完璧に演じきっていた。


母の言わんとする規則に従い
父に怒鳴られないように勤めた。
髪の毛を短くしろと言われればカットし
父が決めた門限六時までに帰宅する。


中学生の頃
模擬試験で30点も取れなかった私が
自分を見失う程、勉強した。
完全なる操り人形を演じる私に安堵する母は
私の事を信じきっていた。



真央の家で
中学の同級生だった美穂や他の友達とお泊り会の話があった時も
父は不満気であったが
母が快く背中を押し許可を出してくれた。
私はそれをよい事に
平気で親に嘘を付いては外泊するようになった。
親を騙しているという罪悪感なんてものは微塵もなかった。
色んな理由を作っては
男と一緒に朝を迎えた。



それは誰もが描く
「愛」などと言った美しいものではない。
黒いドロドロとした私の中に潜む闇。
その行為は私への戒めでもあったのだ。



12:失われた小鳥たち (1)

2015年12月20日 14:34

その日は、晴天であった。
体を大きく仰け反り大空を見上げてみると
どんよりした重苦しい私の心とは裏腹に
どこまでも澄みきった青空であった。




どのようのに別れを告げ
家に戻ってきたのだろうか。
記憶がない。
ただ二度と戻れない、という濁った感情と
普通の女の子とは違うという想いが
私の心に重く圧し掛かり
いつまで経っても
私の体に纏わりついたものが消える事はなかった。





              気だるい。




誰かが私の体がに圧し掛かっているような感じさえする。
体中が重たくて
いつまで経っても異物感が私の中から消える事はなく
そのまま居間の畳の上に崩れ落ちるように横になった。




写真・・・




掌に握りしめられた一枚の写真。
見られたらどうしよう。
捨ててくれば良かった・・・そう思うのに
私の体は鉛のように重たく起き上がる事が出来なかった。


どうでもいい。

忘れたい。


重い瞼を閉じ
私は現実の世界から解き放たれた。



11:操り人形(5)

2015年12月19日 14:33

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11:操り人形(4)

2015年12月18日 14:31

高校生ともなると彼氏がいてもいい年齢だ。
両親は異常な程、 神経質になっていた。
それから母は何かにつけて
「お父さん」という言葉で私を制圧し縛り付けた。



お父さんに知られたら

お父さんに怒られるから

お父さんがこう言うから

お父さんが・・

お父さんが

お父さんが・・・


お父さんという言葉を口にしては
最後に必ず
我慢しなさい!言う通りにしなさい!言う事を聞きなさい!という言葉を付けた。




私は自分の考えや感情
意思というものを持つ事すら許されなった。
両親と言う存在に全て奪いとられた。



気が狂いそうだった。




どうにかなりそうだった。




両手で自分の髪の毛を鷲づかみにすると
力一杯、髪の毛を引き抜いた。
自分の髪の毛を掻きむしっては
何度も、何度も、掴みあげ一気に引き抜いた。


どこにも逃げ場がなく
捌け口のない私は
自分を痛みつける事で発散するしかなかった。




11:操り人形(3)

2015年12月17日 14:29

満員で席が空いてない。
私は手すりに摑まると
体が揺れないように力強く足を踏ん張った。



   ------- 良かったら隣に座らない?



バスが一緒になった男子に声をかけられた時でさえも
両親の耳に入る事を恐れる私は
離れた場所に移動したり
これ以上、話しかけられないように
目的地よりも手前の停留所でバスを降りる。

何やっているんだろう。
家まで遠いのに・・なんて思いながら
トボトボと長い距離を歩いて帰る事なんて事もあった。






「それ人違いだよ。 私じゃない。」


「アンタがバス停で男と二人でいるとこを見たって
佐代子さんが家にまで言いに来たんだから!」



佐代子とは近所に住んでいる噂好きの口煩いクソ婆。
高校の前を車で通ったソイツは
一瞬、目にした真央が男に見えたのだろう。
そんな事をわざわざ言いに家に来るなんて
どうかしている!







みんな狂っている。



----------   私の言う事と運転しながら

           一瞬、パッと見ただけの人の言う事と どっちを信じるのよ!!





泣きながら叫ぶ事しかできなかった。






11:操り人形(2)

2015年12月16日 14:25

部活を通じて知り合った真央。
彼女は高校の美人コンテストで三位に入賞する程の美女。
モデルのように背が高く
ショートカットの彼女の顔はとても小さくて
足の長い綺麗な女の子だった。
彼女とはクラスは違ったが
放課後一緒に過ごす事が多くなっていた。


放課後
バス停の向かい側の木陰で
二人で他愛もない話をしながら過ごしていた。



いつものように家に帰り
玄関を開けた途端
母が血相を変えて飛んできた。





   ―― アンタ、放課後、男と一緒に居たの?




言っている事が分からなかった。


私は高校へ行っても男子と一切、口を聞かなかった。
話しかけられても
どう接していいのか分からない。
図書室に閉じ込めら逃げ出す時に大声で笑われた
あの嫌な出来事がフラッシュバックし
頭の中が真っ白になった私はその場から逃げ出してしまう。


いつになっても男嫌いは治らず
誰かを好きになるどころか
人を好きになる気持ちさえも分からなかった。



11:操り人形(1)

2015年12月15日 14:22

高校に進学するようになった頃から
母は異常な程
私に執着するようになっていった。




朝は身体検査のようにスカートの長さ
履いている靴、靴下までチェックした。
当時、学校では黒い靴下が流行っていて
校則違反ではあったが誰もが履いていた。
黒い靴下を履き、家を出ようとすると
狂ったように
校則! 校則! 校則!と母が叫び
白い靴下を投げつける。



両サイドに刺繍が入ってるのもダメ。
短い靴下もダメ。
中途半端な長さの靴下を履かされる。
母の前で折り曲げたり
下にずらしたりしたら、また怒鳴られる。



コ―トもそうだった。
入学前、学校指定コートを買う余裕がなかった母は
近所の叔母さんから卒業生のコ―トを貰ってきた。
それは八年も前のコ―ト。
時代を感じさせる萎びた紺色のコートの裏地は
昭和の香りが漂う花柄の裏地が付いていた。


八年も前のコートだ。
学校指定といえどもデザインも全く違う。
学校中探し回ったって
こんなの着ている人はいない!


その事を母に告げると
お前の事を想ってやっているのに、いいから言う事を聞け!
規則っ! 規則っ!! 規則っ!!!
母は大声で規則という言葉を三回怒鳴ると
泣きながら抵抗する私の腕に無理やり袖を通した。




10:女の情けに蛇が住む(8)

2015年12月14日 14:16

        -------  高校行っても元気で!



                   バイバイ!





書き殴るかのように色紙に書かれた彩加の文字。
だがそれは私にだけではなくて
同級生の皆にも同じセリフを乱雑に書いていた事もあり
卒業する頃には
そんな彩加の事を皆、快く思っていなかった。



ただでさえ嫌悪感を抱く中
いつも皮肉を言われている私の姿に
腹を立てたチーちゃん
そして私を虐め続けた舞までもが心配し気にかけてくれていた。



中ニの春
両親の離婚を機に隣町の中学へ転校した舞。
それまでは虐める立場にいた彼女だったが
転校を機に虐められる側の立場となった。
ボールを顔面に投げつけられ
教科書や体操服をゴミ箱に捨てられた舞。
その話を耳にした時
私へやり続けた事に対しての罰が当たったんだと思った。
人の痛みというのは、同じ経験をした者にしか分からない。
彼女は高校に進学するまでの期間
虐めの被害者になった事により
私にどれだけ酷い事をやってきたのか思い知ったのだ。





   ――― あのさ、彩加って度が過ぎない? やり過ぎだよ。
        クラスは違うけどさ、良かったら一緒にご飯食べよう。
        舞さんもね、小雪の事、すごく心配しているよ。




もう過ぎた事。
舞を憎んでいるとかそんな気持ちはないし
私の事を気にかけてくれる
彼女の気持ちは素直に嬉しかった。
たが彼女が私にヤッタ事は一生消えない。
今更、どう付き合っていいのか
どう接していいのか
何を話せばいいのか分からなかった。


「慣れるまでの間だし、大丈夫だから。」


彩加の事は嫌いだったが
私は彼女と一緒に過ごす事を選択した。




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